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2017年08月23日
国税不服審判所 裁決事例 貸家建付地 平成25年10月1日裁決 名裁(諸)平25第13号 争点1

争点1

本件土地の評価に当たり、本件土地の全体について評価通達26に定める貸家建付地の評価を適用すべきか否か。

 

 

【原処分庁の主張】

 

本件土地の評価に当たっては、次のとおり、本件土地のうち、本件家屋の請求人■■■の共有持分で、ある10分の9に相当する部分については、評価通達26に定める貸家建付地の評価を適用すべきではない。

 

イ 賃貸借により土地上の建物を貸し付けている場合、敷地所有者の借家人に対する明渡し請求には借地借家法第28条《建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件》に規定する正当の事由が必要になるのに対し、使用貸借により土地を貸し付けている場合、敷地所有者は、当該土地上の建物の借家人に対して借地借家法の制限を受けずに土地の返還請求ができるものというべきであり、両者の法律関係は、当然に同様であるとはいえない。

そして、使用貸借の場合には、上記のとおり、借地借家法の制限を受けないことから、使用借権が付着していることによる減価を考慮せず、これを更地(自用地)として評価するのが相当である。

また、請求人■■■は、本件土地の相続を受けても、借地借家法の保護を受ける借家人との賃貸借契約に縛られた状態でしか本件土地を利用できないが、これは、たまたま請求人■■■が、本件家屋を第三者に賃貸しているという事情があるため、結果としてそうなるというだけであるから、本件土地の評価に影響は与えない。

 

ロ 土地の評価上、所有者による自由な使用収益を制限する他者の権利の有無が、重要な要素であることは明らかであり、また、評価通達2は、共有財産の持分の価額は、その財産の価額をその共有者の持分に応じてあん分した価額によって評価する旨定めていることから、本件土地のように、本件家屋の共有持分に応じてその敷地を制約する権利に相違がある場合には、評価通達2に準じて、その敷地についても、本件家屋の共有持分に応じて、それぞれ権利の有無の状況に応じた評価をするのが相当である。

 

【請求人の主張】

 

本件土地の評価に当たっては、次のとおり、その全体について評価通達26に定める貸家建付地の評価を適用すべきである。

イ 借家人は、その家屋の敷地を利用せずに家屋に居住等ができないため、家屋の賃借権に基づいて家屋を利用するために必要な範囲内で、その敷地を使用じているということになる。

そして、借家人の敷地に対する使用権を内包する借家権を消滅させるには、立退料の支払を要する場合もあり、また当該敷地を譲渡する場合には、上記借家権が付着していない場合の価額よりも相対的に低い価額で取引が成立することから、評価通達26により、一定割合を差し引いて貸家建付地の評価額を算定することが税務上認められていると解される。

本件土地は、賃貸目的の本件家屋の敷地の用以外には供されておらず、自用地であれば自由に処分できるが、借家人の存在があることにより処分が拘束され、自由処分できない土地である。

したがって、本件家屋の持分にかかわらず、本件土地に及ぶ経済的効果は同一であるといえるから、本件家屋に本件被相続人の持分が一部でもあれば、本件土地の全体について貸家建付地の評価をするのが相当である。

 

ロ 評価通達26には、貸家に共有持分がある場合についての定めはなく、ほかに貸家の持分によって土地の評価額が変動すると定めた法令は存在しない。

また、使用貸借通達にも、評価通達26と同様に、家屋が共有の場合についての定めはない。

したがって、租税法律主義及び課税要件明確主義に照らし、原処分は違法である。

 

 

【国税不服審判所の判断】

 

(イ)本件への当てはめ

 

本件土地は、前記1の(4)のイの(イ)のとおり、本件相続開始日において、本件被相続人及び請求人■■■が共有する本件家崖の敷地の用に供されていたものであり、本件家屋の共有持分に応じて利用されていたといえることからすると、本件被相続人及び請求人■■■は、本件家屋の共有持分に応じて敷地利用権を有していたものと認められる。

そして、請求人■■■が本件家屋の共有持分に応じて有していた敷地利用権は、前記1の(4)のロによれば、使用借権と認められるから、上記イの(ハ)のとおり、当該使用借権が付着している土地については、当該土地の上に存する建物について賃貸借関係が成立しているとしても、当該使用借権が付着していることによる減価を考慮せずに本件土地を評価することが相当である。

したがって、本件土地のうち、請求人の本件家屋の共有持分である10分の9に相当する部分は、評価通達26に定める貸家建付地ではなく自用地として評価すべきであり、本件土地の全体について評価通達26に定める貸家建付地の評価を適用することはできない。

 

(ロ) 請求人らの主張の当否

 

A  請求人らは、本件土地は、賃貸目的の本件家屋の敷地の用以外には供されておらず、借家人の存在があることにより処分が拘束された土地であり、本件家屋の持分にかかわらず、本件土地に及ぶ経済的効果は同一であるから、本件家屋に本件被相続人の持分が一部でもあれば、本件土地の全体について貸家建付地の評価をするのが相当である旨主張する。

しかしながら、上記(イ)のとおり、建物の共有者は、その共有者の持分に応じて共有建物が存する土地の敷地利用権を有するものであるところ、請求人■■■の本件家屋の共有持分に相当する部分の敷地利用権、使用借権であり、上記イの(ハ)のとおり、使用貸借に基づく敷地利用権の上に、建物の賃貸借関係が成立しているとしても、この建物賃貸借は、敷地所有者との関係でみると、使用貸借の存続・消滅と運命をともにするものにすぎず、使用貸主である敷地所有者は、建物の賃借入に対し、借地借家法の制限を受けることなく土地の明渡し請求をすることができるのであるから、本件土地のうち、請求人■■■の本件家屋の共有持分である10分の9に相当する部分は、使用貸借通達3に基づき自用地として評価することが相当である。

 

なお、確かに、請求人■■■は、本件土地の持分の相続を受けても、借地借家法の保護を受ける本件家屋の賃借入との賃貸借契約に縛られた状態でしか本件土地を利用できないが、これは、たまたま、請求人■■■が本件家屋を第三者に賃貸しているという事情に基づくものであって、同じ土地の評価を相続人側の事情によって変えるのは妥当ではないから、このような事情は本件土地の評価には影響を与えないというべきである。

したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。

 

B  次に、請求人らは、評価通達26には、貸家に共有持分がある場合についての定めはなく、ほかに貸家の持分によって土地の評価額が変動すると定めた法令は存在せず、また、使用貸借通達にも家屋が共有の場合についての定めはないから、租税法律主義及び課税要件明確主義に照らし、原処分は違法である旨主張する。

 

しかしながら、評価通達や使用貸借通達は、民法の規定等によって確定された権利関係を前提として、財産の価額を評価するものであり、共有については民法に定められているのであるから、評価通達26及び使用貸借通達に家屋が共有である場合の記載がないことをもって租税法樟主義及び課税要件明確主義に反するものとはいえない。

したがって、この点に関する請求人らの主張にも理由がない。

 

(ハ) 結論

 

以上のことから、本件土地のうち、請求人■■■の本件家屋の共有持分である10分の9に相当する部分については、自用地として評価するのが相当であり、本件土地全体について貸家建付地の評価を適用することはできない。